18 南 | back | next | top |
目が覚めると、自分の部屋じゃない天井が見えた。 一瞬、どこにいるのかわからなくなる。 ――ああ、そういえば昨夜は飲み会で、そのまま雅美の部屋に泊まったんだっけ。 そこまで思い出して、のろのろ身体を起こす。 「起きたのか、健太郎」 先に起きていたらしい雅美が、声をかけてきた。 「うー、頭重い……なあ、のど渇いた。水くれよ、冷たいやつ」 「お前な。風邪をひかないように、と思って布団をくれてやった心優しい恋人に、おはようの一言も言えないのか?」 文句を言いつつも、雅美はコップと、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを持ってきた。 そういえば、俺の身体には布団がかかっている。 水と布団のことをまとめて「ありがとう」と礼を言って、俺は二杯ほど水を飲み干した。 そしてやっと人心地ついたところで、昨夜の記憶をたどる。 飲み会終わって、部屋に来て、雅美がずっと俺の話聞かないで飲んでて、だから俺も飲んでて。 ――最後にはちゃんとあやまることができたような、うっすらとした記憶…… 「……健太郎。昨夜は、お前に途中で寝られ……」 雅美が何か言いかけたとき、俺の携帯が鳴った。 「あ、ごめん、メールだ。雅美、なんか急ぎの用か?」 「いや、いいよ」 口ではそう言いつつ、残念そうにため息をつく雅美をちょっと不思議に思いながら、俺は携帯の画面に目を落とす。 メールの主は千石だった。 『二軒目行ったら、とある学校の先生たちと遭遇しちゃったよん☆ 今度一緒に飲み会やろって言っといたから、ヨロシクね!』 「……どこの学校だよ、そりゃ」 思わず、携帯に向かってツッコむ。 ――まったく、またあいつはナンパみたいなマネをしたんだろうか。勝手に約束とりつけてきやがって、しかもすでに「ヨロシク」って何なんだよ! それに、下手な学校相手だと、主任会議でその学校の主任に会ったとき、なんか言われそうなんだよな……やれやれ。 |
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